「ピースクラフツSAGA」は認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパンが実施する佐賀の伝統工芸を支援するプロジェクトです。
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永遠のデザイン!ポップな水玉に熱い思いを込める副千製陶所の副島謙一さん

肥前吉田焼は、佐賀県嬉野市の吉田地区にて400年以上にもわたり、日用食器を中心に製作されてきた焼き物です。副千製陶所は、肥前吉田焼の代名詞ともいわれる水玉模様を得意とする窯元で、平成22(2010)年にはグッドデザイン・ロングライフデザイン賞も受賞しました。窯主の副島謙一さんは、水玉模様を「掻き落とし」という技法を使い、一つひとつ手彫りで仕上げます。今では、全国でも「搔き落とし」で水玉を彫る職人は少ないとのこと。副島さんは卓越した技術を持つ職人さんです。モダンでデザイン性あふれる水玉の器はピースウィンズ・ジャパンのふるさと納税の返礼品としても評判です。産地としてのこだわりや、水玉模様への熱い思いを、副島謙一さんに伺いました。

◆ストリートパンクに熱中した高校時代

副島さんは生まれも育ちも吉田地区。子供のころは、好きだった恐竜関係の仕事に就くことが夢だったそう。「ただ、どんな仕事があるのかも分からず、座学も苦手でした。漠然とモノづくりがしたいとは思っていました」。高校では、グラフィックデザインを専攻し、ひたすら描き続ける毎日だったそうです。当時、世界のアートシーンを先導していた「ストリートパンクにも傾倒した時代だった」と副島さんは懐かしそうに言います。卒業後は佐賀県立有田窯業大学校で焼き物の知識と実技を勉強されたそう。卒業後は3年間、東京の業務用食器店で働き、吉田に戻られました。「親父が亡くなって、家業を継ぐ覚悟を持つようになりました」。自分で会社の舵を取るようになり、副島さんは大きな責任を感じたそうです。今は弟さんとともに、肥前吉田焼の新しい可能性を信じ、地元の名品、嬉野茶とのコラボなど様々なことに挑戦されています。

◆人との縁から生まれるチャレンジ精神

「人との縁には恵まれていると思います。お金儲けはヘタですけれど(笑)」。様々な人と出会って、一緒に仕事をしたり、手伝いをしたり、してもらったり。「様々な人に影響を受けて、いろいろなことにチャレンジしていると感じています」。澄川伸一さんとピースウィンズ・ジャパンのEDITIONプロジェクトについても「刺激的な商品開発でした。デザインについて改めて考えるよい機会になりました」と副島さん。「趣味は、友人との宴会ですね!宴会では、飲みすぎない、必ず料理したものを持ち寄る等、ルールを決めてお酒を楽しむようにしています。メンバーは、焼物関係者だけでなく、地元の先輩や後輩など。悩みを語り合うこともあれば、延々と他愛もない話をしたり。コロナ禍のときは機会が減って寂しかったですね」。

◆眼鏡にTシャツ・・・ファッションに込められた個性

副島さんのトレードマークと言えば、Tシャツに個性的な眼鏡。「メガネは1年に1個追加していきます。必ず3本は持つようにしていて、新しいものから1軍、2軍、3軍という感じで使っています」。水玉を彫るときに粉塵が出て、眼鏡が傷ついてしまうため、2軍、3軍もフル活躍だそう。「フレームを選ぶ基準は、他の人とかぶらないこと。人と同じは安心するけれど、自分らしくないなと思っています。普段は、赤や黄色など強い色が好きです。年の割に・・・と言われますが(笑)」。

◆青春期のパンクな一面を表現したい!

「今後はアートの要素の強い作品もつくりたい」と語る副島さん。技法を駆使して面白いもの、見た人が楽しめるようなものを生み出したいと意欲満々です。「普段はシンプルな技法で器づくりをしますが、展示会などに出す作品では、自分の中のダークサイドな部分も表現したいですね」。「つくっていてわくわくしたい!」というピュアな思いが副島さんの作品づくりの原動力のようです。「祈願達磨(写真左)をつくったときも、周りからは『怖い』と言われました。しかし、陶器市の時に店頭に並べていると、『なにこれ!?』と多くの人の注目を集めました。してやったりです」。少年がいたずらを思いついたときのような楽しそうな顔で話す副島さん。製作を楽しむ気持ちが、多くの方に愛される器づくりに活かされています。

◆水玉に込めた産地への思い

「副千製陶所でつくった水玉模様はテレビで一瞬出ただけでも分かります」。副島さんの水玉へのこだわりを感じさせます。その一方で、「水玉(の「掻き落とし」)もゆっくりやれば、誰にでもできると思います。大切なのは、流れを止めないことです。失敗を恐れると止まってしまいます。しかし、焼き物の世界は経験値がすべて。失敗しないと先へは進めません。たくさん失敗するからこそ、成長できるのだと思います。最終的には、やる気があるかどうかです」。「大量生産が必要だった時代はマニュアル通りにつくることが大事でした。しかし今は時代の流れや嗜好性の変化をしっかり受け止めてモノづくりをすることが重要なのだと思います」。吉田地区の他の窯元への技術継承も積極的に行う副島さん。特に次世代の悩みを聞いたり、サポートしたりすることが産地の力になると考えています。「技術は秘すものではないと思っているので、オープンにしています。新しく見つけた効率的な方法なども、伝えるようにしています」。産地全体のことを考え、何事も楽しんでいる副島さん。副千製陶所の商品がロングセラーとなっているのは、副島さんの懐の広さと鋭い時代感覚がもたらしているのかもしれません。

公開日:2022年6月17日
 
更新日:2022年6月17日

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