家庭用からかっぽう食器に至る幅広い有田焼を、鋳込から成型絵付まで一貫して生産する幸楽窯のうつわたちは、ピースウィンズ・ジャパンのふるさと納税の返礼品でも人気の逸品。既存の有田焼イメージを打破すべくさまざまな企業や団体とコラボレートする徳永隆信さんにお話を伺いました。
慶應元(1865)年創業の幸楽窯は、家庭用食器からかっぽう食器に至る幅広い商品を、鋳込から成型、素焼、絵付、本焼、赤絵付までの全工程を一貫して自社で生産している有田焼の老舗の窯元。徳永隆信さんは家業を継ぐ5代目社長です。京都芸術大学で陶磁器の技法を学んだ後にガラスメーカーに就職。大手飲料メーカーへのプレゼン担当者としてマーケティングを実践的に身に付け、デザインのソフトウェアを用いたシステム構築を手掛けました。その後、実家である幸楽窯に戻り、平成23(2011)年に社長に就任しました。
徳永隆信さんが窯元の経営を継いだ2か月後に東日本大震災が起こり、窯元の経営も低迷する事態に陥りました。「150年のわが窯元の歴史のなかで、主力製品は火鉢から食器、軍用品から家庭用品へと移り、その時代のニーズに応じて生産する能力と体制を拡大/縮小しつつモノづくりを続けてきました。父は職人肌というか芸術家肌のひとで、いわゆる<アートピース>を創ることにも情熱を傾けていましたが、私は、伝統の職人として技法を追求するアートピースだけがモノづくりではない、と考えています。特にうちは他社にさきがけて転写技術を導入し技術が蓄積されていましたので、こういった窯元の強みを<プロダクト>として昇華させることが、これからの幸楽窯に必要なことだと考えています」。
ピースウィンズ・ジャパンへのふるさと納税の返礼品「カトラリーレスト リアリタ」は、ピースクラフツSAGAと幸楽窯の商品開発プロジェクトで誕生した有田焼です。「製作はまず、デザイナーの澄川伸一さんがフォルムのデザインを考案されることから始まりました。その後、3Dプリンタでつくられたモデルをもとに幸楽窯に在籍する原型師が型を作成しました。文様はこれまでの商品サンプルの中から澄川さんが選ばれてデザインし直したものです。この文様は伝統的な古伊万里様式の<錦手>がモチーフになっています。澄川さんとのモノづくりは非常に刺激的でした」。このリタリアのほか、幸楽窯のピースウィンズ・ジャパンへのふるさと納税の返礼品には、「錦川蝉形ミニ汁次」「錦菊花尽くし七寸平盛器」「遺灰ペンダント&手元供養壺TOWAKI」などを取りそろえており、いずれも好評です。
1万坪という広大な敷地を持つ幸楽窯には、小学校の校舎を再利用したという工場や倉庫、ゲストハウスが点在しています。東日本大震災の時に大堀相馬焼の窯元の人たちに避難場所を提供したことをきっかけに、アーティストをゲストハウスなどに受け入れ、長期滞在のなかで制作に専念してもらうプログラム「アーティスト・イン・レジデンス」が始まりました。また、このプログラムで滞在していたブラジル人のアーティストが、工場の隅に積まれた陶磁器の在庫を見て「ここに眠っている陶磁器はお宝じゃないか」と驚愕したことがきっかけとなり「トレジャーハンティング」も始まりました。面白いものです。「トレジャーハンティング」は、制限時間90分で買い物かご1箱に陶磁器を詰め放題で持ち帰れるというもので、今や観光客に大人気です。
「私がピースウィンズ・ジャパンさんに協力しようと思ったのは、スタッフに若い人がたくさんいることです。地域の内外の若い人たちとモノづくりだけではない<コトづくり>の新しい展開を考えることは、私たちのモノづくりのシステムや販路開拓にもつながっています。人と技術のプラットフォームを目指すことで、有田焼全体のブランド力アップに貢献したい。そしてあらゆる要望を地域で受けて、地域で応えるようになれば、有田はもっと強くなるし、有田だけでなく近隣の波佐見なども含めた<肥前窯業圏>の発展につながると思います」。
取材写真:藤本幸一郎、商品写真:ハレノヒ
公開日:2020年12月24日
更新日:2021年2月17日
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