尾崎人形は尾に空いた穴に口を近づけて息を吹き込むと、ホーッと優しい音色を奏でる土人形。ピースウィンズ・ジャパンのふるさと納税の返礼品にもなっています。人形ごとにかすかに音色の違う、手づくりならではの個性が豊かなふるさとの玩具を製作する、高栁政廣さんにお話を伺いました。
江戸時代には佐賀藩の献上品ともされた土器(かわらけ)の肥前尾崎焼のなかで、今もつくり続けられているのが土人形の尾崎人形です。尾崎人形は肥前尾崎焼の製法そのままに、粘土を型に入れ1日ほど乾かしたものを窯で焼き、絵付けを施して仕上げられています。
「今から700年以上も昔の蒙古襲来の頃、尾崎の地に流れ着いた蒙古人が皿や茶碗、人形や土笛のつくり方を教えたのが肥前尾崎焼と尾崎人形のはじまりだと言い伝えられています―」。そう語るのは人形づくりを今も受け継ぐ神埼町尾崎の高栁政廣さんです。
高栁さんの尾崎人形づくりは、地域に残ったただ一人のつくり手・八谷さんが残した人形の型を受け継ぎ始まりました。「私の父が肥前尾崎焼の火鉢などをつくっていましたので、お前はやきものづくりを見て知っているだろう、尾崎人形を継ぐのはお前しかいない、とずっと言われ続けていました。が、そのうち人形づくりを教えてもらおうと思う前に、その八谷さんも亡くなってしまわれて。結局地域で誰もやる人が見つからず、自分が人形づくりをやることになりました。今から10年以上も前のことです」。
尾崎人形の型は古くからの「鳩笛」「水鳥」「赤毛の子守り」の3種類に、「兵隊」など時代の流行で加わったものを含め、現在は40種類程度が伝えられています。尾崎人形はいずれも吹き口があり、吹くと「ポー」という素朴な音色が響く土笛です。「とくに鳩笛のことを方言で<テテップゥ>というのですが、テテップゥはこの地に流れついた蒙古人が故郷をしのび吹いたという言い伝えがあるんですよ。尾崎人形はこのどこか懐かしいような音が身上です」。
「最初のころは夜も寝ないで土笛のつくり方を考えました。私が受け継いだ尾崎人形の型も既に古くなっていましたので、その型から鳩笛をつくっても音が出ないんですね。人形の種類によって音も違いますが、音色の違いを確かめようにもつくり手は今や自分だけ。あちこちの土笛づくりの工房を見て学び、ようやく昔からの音を再現しました。大変でした。土笛は型によっても音色が違いますが、同じ型でも冬場と夏場とつくったもので音も微妙に違ったりするんですね。それも尾崎人形の味です」。
ピースクラフツSAGAのふるさと納税でお届けする尾崎人形は、伝統の「鳩笛(テテップウ)」「カチガラス」「相撲取り」に、近年高栁さんがつくり始めた干支をモチーフにした4種類。とくに「このカチガラスは八谷さんの代からつくり始めたものですが、カチ(勝ち)カチ(価値)と啼く鳥なので、縁起もよかでしょ。他所にはない人形だと思います」と高栁さん。
「尾崎人形はよく<素朴>といわれますが、自分がつくったものですから。やっぱり買う人が手に取って、<これは買ってよかった>という人がおられるというのが、うれしかことで私の生きがい・やりがいですねぇ。毎年買っていただける方や最近は海外からも工房に来ていただくのもうれしいことです。後継者も決まりました。尾崎に移住し、販売活動も積極的にしてくれています。体の続く限り一緒にやっていきたいですね」。
公開日:2017年2月22日
更新日:2021年4月12日
尾崎人形/高栁政廣の返礼品紹介
最新のつくり手
© Peace Winds Japan, All rights Reserved.