浮立面(ふりゅうめん)は木彫の技と凄みの美を持つ 一本の木から彫り出された鬼の姿の工芸品で、ピースウィンズ・ジャパンのふるさと納税の返礼品にもなっています。近年では郷土芸能「面浮立(めんぶりゅう)」のみならず、魔除けや記念品としても用いられる浮立面を製作する中原恵峰さんにお話を伺いました。
佐賀県・鹿島地域の彫刻「浮立面」は、佐賀県南西部に広く伝わる郷土芸能・面浮立の面づくりから発展してきた木彫の技です。面浮立とは鉦(かね)や太鼓の音に合わせ、腹につけた鼓を打ちながら踊る伝統芸能で、鹿島市には約300年前の作と推定される古い浮立面も文化財として伝わり、面を打つ木彫の技も祭礼とともに続いてきました。この浮立面を彫る面師のひとりである「中原恵峰工房」の中原恵峰さんは、浮立面をはじめ木彫の兜や雛人形、置物や菓子木型など、暮らしに根付いた品々を彫り続けています。
「私が木彫の道に入ったのは昭和29(1954)年のこと。モノづくりが好きだったんで親にも相談せずに自分ひとりで決めてしまったんです。うちは農家だったんですが、親としては果たして彫刻で生活していけるんだろうか、と心配したようです。ものづくりなら建設会社に勤めたら、と勧めるひともいたりして。それでも彫刻がやりたいというただその気持ちだけで彫刻屋に修行に入りました。15歳のことでした。当時は5年間が修行の時代で、休みは月に2日。夜は9時まででとにかく仕事ができるまでが厳しかった」。
「弟子入りした当時は今と違って、落雁や生菓子の菓子木型の注文が多かったですね」。佐賀は長崎からもたらされる砂糖の影響で菓子づくりも盛んですが、和菓子の木型はいわば影の存在。この木型を彫る職人は現在では全国でも数が少なくなり、今では貴重な技となりました。「この修行が続いたのも、今思えばやっぱりものづくりが好きだったんでしょうね。彫刻屋の修行は親方と兄弟子の下準備ばかりでしたが、ここで<耐える>力がついて、ここまでやって来れたんだと思っています」。
「木彫で大事なのは素材。山中の自然の中で育った目の詰まった木の堅さ。いい材料でつくったものとそうでないものは、彫り上げた品を一見しただけで、誰でもわかる。目の詰まった材料は仕上げた時の艶が違うんですね。飾りとしての浮立面を注文される方は、魔除けの気持ちも強く、私も願いを込めて九州北部で採れたクスノキを、実用の踊り用には軽い桐を用いて彫り上げています。道具として耐久性を考えると木型にはタブの木などを。浮立面も素材同様に何十年・何百年生き続けるように、いい素材を使うと、作品づくりにも自然と心がこもります」。
「ここまで60年以上浮立面を彫り続けて来て大切だったことは、自分のからだにも神経を使うこと。この中原恵峰工房はいずれ息子が継いでくれると思うんですが、工房が2代目3代目と続いていくなかで、初代はこんな作品を残したんだな、と後代が思ってくれるような作品を残したいですね」。ピースクラフツSAGAのふるさと納税でお届けする「飾り兜」は、中原さんの浮立面を彫る技の結晶ともいえる逸品です。
「面浮立は文化財の伝統芸能ですから、彫る浮立面もいつかは文化財になれるように。彫刻を<趣味>でやる方は多いんですが、職人としての<プロ>となるとこれは大変。いいモノをつくってもお客さんが振り向いてくれないと、生活が成り立ちませんので、息子も大変だとは思いますが、道を切り開いて欲しい」。
公開日:2017年2月22日
更新日:2021年2月17日
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