たなかふみえさんは有田焼の陶芸家です。たなかさんの作品の魅力は、何より端正な器に描かれた絵付け。ピースウィンズ・ジャパンへのふるさと納税の返礼品の中でも高い人気を誇っています。どのように作品が生まれているのか、工房でお話を伺いました。
女性的で繊細でかわいらしく、またどこか現代的で都会的な雰囲気も持つ、たなかふみえさんがつくる有田焼。自身の作風の原点について、たなかさんは「お菓子の箱」と明かします。「昔からお菓子が入った蓋付箱が好きでした。中に幸せが閉じ込められていそうで、開ける時にわくわくするから。東京へ行く時にはたいていデパ地下で素敵な蓋付箱のお菓子を買い、またおいしそうなお惣菜を眺めては盛る器を想像します。他に文房具や洋服、布やリボンなどの服飾小物売り場を見るのも楽しい。小さくてかわいいものに魅かれるんです」。
たなかさんは東京で生まれ育ち、かつては会社勤めをしていました。父が亡くなった後、母から故郷の佐賀県有田町に戻りたいと相談された際に、一緒に有田町へ引っ越す決意をしたそうです。「有田町で暮らすのだから有田焼を勉強してみよう」という最初はほんの軽い気持ちから、たなかさんは佐賀県立有田窯業大学校で絵付を学びました。絵を描くことは元来、苦手だったというたなかさんですが、「楽しくなってハマった」と言います。同校で知り合った窯元に声をかけられ、卒業後は同窯に就職。すると出社初日から蕎麦猪口の絵付を生産現場で任されました。「ぶっつけ本番の緊張感によって腕を鍛えられた」とたなかさんは当時を振り返ります。
窯元での仕事をとおして否が応でも技が磨かれたおかげで、「絵付ができると、オリジナル作品をつくることができる」とたなかさんはある時気づきます。仕事のかたわら、友人と共に二人展を開くなどの活動を徐々に始めたたなかさんは、同窯に7年半勤めた後に退職して独立。有田町にある民家を利用して、1人だけの工房を構えました。現在、別の窯元にいる優れた腕を持つロクロ伝統工芸士の友人に生地を挽いてもらっています。たなかさんは生地を受け取り、工房に並べて乾燥させ、絵付けを施し、電気窯で焼成してはまた絵付けを施して焼成することを日々丹念に行っています。
たなかさんが主に手がけるのは染付と赤絵を組み合わせた「染錦」。染錦は江戸時代に焼かれた有田焼にもよく用いられた絵付方法です。「染付だけでは以前に勤めていた窯元の個性がどうしても出てしまうので、なるべく赤絵や銀彩を加えて、自分らしさを表現しようと思いました」と説明します。また、母の親戚筋が赤絵の絵付師だったことも意識しました。「元々、古典文様を見るのが好きなんです。和服や昔の細々とした生活道具も好き。古い図録や図案集などを見て気に入った文様があれば写すのですが、筆のタッチに自分の癖があるため、描いているうちに自然と絵が変わっていってしまう。結果的にそれが自分らしさになっているんだと思います」。
「染錦松竹梅パンダ縁付小皿」や「銀彩鳥小花福楽マグ」などは、絵付のかわいらしさから、ふるさと納税の返礼品の中でも特に高い人気があります。「器は、女性にとってままごと道具の延長のよう。私自身、この器にはアイスクリームを盛ってみたいとか、いろいろと妄想してはウキウキしながら絵を描いています。主役の器よりも、脇役の器をつくりたい。なくてもいいけれど、あったら幸せという有田焼がつくりたいんです」。たなかさん自身が生活者としてのときめきを大事にしながら、楽しんで製作していることが、作品の魅力となっているようです。
(文:杉江あこ/意と匠研究所、取材写真:藤本幸一郎、商品写真:ハレノヒ)
公開日:2019年2月1日
更新日:2021年2月16日
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