今年のピースクラフツSAGA EDITIONもデザインは澄川伸一さんに、そして3回目となる伊万里焼の青山窯(せいざんがま)が参加。これまでの「森羅万象」花器シリーズ4作目です。
新作となる「炎」は、EDITION2023で制作を進めていましたが難易度が高く完成できずに発表を断念。試行錯誤を重ねついに完成となりました。青山窯さんの澄川さんのデザインをカタチにするためにチャレンジし続ける根気強さと探求力、そして肥前窯業圏の結束力があってこその逸品です。
ふるさと納税の返礼品となるほか、各事業者の店舗でお求めいただけます。
青山窯は秘窯の里、大川内山(伊万里市)で140年もの歴史をもつ窯元です。江戸時代に鍋島藩の御用窯(ごようがま)の献上品として特別につくられてきた鍋島様式。青山窯では、鍋島様式を現代のライフスタイルに溶け込ませるモダンな器を多数生み出しています。今回開発したのは、2022年度から展開している森羅万象シリーズの新作「炎」。大川内山の自然に着想を得たダイナミックなデザインが、命の根源を感じさせます。表面をマットなホワイトに仕上げることで、シンプルでありながら存在感のある一品になりました。
青山窯/川副 史郎さん
澄川さんデザインの自然をテーマにした森羅万象シリーズの花器は、今回の「炎」で4作目となります。2023年から試行錯誤を繰り返していたのですが、焼成時に形状を維持するのが難しくどうしても完成出来なかった作品でしたが、今回ついに焼き上げることができました。
すべての工程に高いハードルがありましたが、澄川さんがこだわった「炎を一体成型のなめらかな動きで表す」が実現できた達成感はひとしおです。
青山窯代々の様式である鍋島焼は繊細な絵付を得意としますが、このプロジェクトは引き算のデザインを学ぶ私に大きな刺激を与えてくれると共に、形状への造詣や様々な開発方法などたくさんのこと学び挑戦する機会を与えてくれました。
構想が出たのは2023年。EDITION2023として制作した「種」を進めながらもう1商品の候補を考えていました。2022年度に発表した森羅万象シリーズの石・水の次の花器として、澄川さんがデザイン。澄川さんのデザインを立体化させた3Dプリンタの模型を見ながら、どのように磁器で形にできるかを探ります。
有田・伊万里は型・生地・上絵などの専門事業者による分業制で発展してきました。青山窯も専門の型屋・生地屋と協力して商品を制作しています。
炎はまず型の作成から難航。上下で太さの異なる躍動感のある曲線をどう形にするか、佐賀県窯業技術センターや型屋の方と打ち合わせを重ね型の制作を行いました。
次はその型を使って生地をつくります。排泥鋳込み(はいでいいこみ)という技法で、型に泥しょうを流し込み、乾燥させ必要な厚さになったら余分な泥しょうを流しだし、型を外すことで、生地が完成します。炎のクロスした曲線は「知恵の輪」のように、複雑な形の複数のパーツからなる型割構成となっており、熟練の職人による匠の技があって初めて実現できます。一体成型にこだわったことで、型を捩じりながら抜くため、細心の注意を払いながらの作業となります。
低温での素焼き後、型から抜いた後残ったバリ跡をやすり掛けし、表面を滑らかにします。本来なら素焼き前にしたい作業ですが先端が細く折れやすいため工程を見直しました。その後高温で本焼成を行います。この本焼成時に、クロス部分がくっついてしまう、荷重に耐えられず全体的に下がってバランスがくずれるなどし、大きく変形してしまいました。支えをつけて焼成をしたり、逆さづりでの焼成を検討したりと、試行錯誤を繰り返し、アルミナ粉を使っての焼成を決意。アルミナは約2,000℃以上にも耐えられる耐火性を持ち、釉薬や土に反応しにくい安定した素材です。そのアルミナ粉に埋め焼きすることで形を支えながらも作品に付着しないため、焼成後にきれいに取り除くことができます。青山窯さんではその知識はありましたが実際の使用経験はなく、佐賀県窯業技術センターに技術指導を受けながら試作を行いました。2023年のデザインから2年後の2025年、ようやく完成となりました。
暑すぎる夏や、寒すぎる冬など、年々気候の変化が激しくなってきています。その影響もあり、室内で過ごす時間も増えてきているのではないでしょうか?とはいえ森林などの自然に身を置くことは私たちの日常生活の中ではストレスを回避させるのには最も有効な手段です。そこで、花器のシリーズとして、伊万里焼の窯元「青山窯」より「森羅万象シリーズ」として足掛け4年で有機的な斬新フォルムで室内にアクセントとなる磁器を制作してきました。「石」「水」「種」に加えて今回は新作「炎」がラインナップに加わりました。非常に高度な窯元さんの技術で製作されとても価値のあるものに仕上がりました。海外から訪れた方々、特にフランスの方たちにこのシリーズは大人気で、様々な磁器の中でも異彩を放っています。ぜひ、季節の花をこの「森羅万象」で室内に潤いを加えてみてください。
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