公益財団法人佐賀未来創造基金との共同事業として行う、2021年度佐賀伝統工芸助成事業。
今年の助成事業者は昨年同様8事業者で、6月からの事業を対象としています。
事業の内容や現状について詳しく伺うため審査員の方々と視察を行いました。
有田焼/渓山窯
取り組み:装置買い替え及び倉庫屋根改修工事
手書きの絵付けを得意とする、有田焼の渓山窯さん。
強みの絵付けを活かして、伝統的でありながら、モダンさも取り入れた日常でも使いやすい器づくりを行っています。
助成金は、器づくりに欠かせない機械の買い替えと生地倉庫の修理に活用予定です。
工房と倉庫の見学をさせていただきながら、お話を伺いました。
販路開拓は営業先へ商品持参の直談判、というエネルギッシュな窯元です。
有田焼/大慶
取り組み:新商品開発
元々は窯元でしたが25年ほど前から商社としての活動がメインとなっている大慶さん。
自社ブランドをお持ちで、素材にこだわった商品プロデュースを行われています。
助成金は商品開発へ活用予定です。
とても営業上手で、ご飯がふっくら炊ける「ふっくら炊っくん」は、視察に参加した全員が購入して帰りました。
商品開発の経緯や、今後の焼物産業に必要なことなどを熱く語ってくださいました。
唐津焼/川上清美陶房
取り組み:登り窯の修復
力強い作風の唐津焼の陶芸作家、川上清美さん。今回の助成金では、窯の修復にご活用予定です。
師匠から受け継いだという窯は年季が入っており、これまではご自分で修復しながら使ってきました。
しかし今後も登り窯のみの焼成で活動を続けるため、今回は専門家に頼み、本格的な修復を決めました。
元々は飽き性だという川上さんですが、40年以上行う焼き物は全く飽きないと楽しそうに語ってくださいました。
唐津焼/健太郎窯
取り組み:伝統工芸と福祉の連携事業のための窯製作
川上清美さんのお弟子さんで、これからの唐津焼を担うと期待される村山健太郎さんの窯です。
鏡山の中腹にある工房からは圧巻の景色が見下ろせます。
近年は観光客向けに唐津焼焼成の体験プログラムも行われていますが、
昨年までいらっしゃったお弟子さんも卒業してしまい人手不足だったとのこと。
そこで現在は、福祉施設と連携して実施する計画が進行中。
障がい者の就労支援、唐津焼の弟子問題や人手不足解消にもつながる、今後がとても楽しみなプロジェクトです。
唐津焼/鳥巣窯
取り組み:「茶箱で野点」体験イベントスペース整備
こちらも川上清美さんのお弟子さんで、2014年に開窯した岸田匡啓(まさひろ)さんの窯です。
作陶、都市圏での展示会活動以外にも、窯のある鳥巣集落で窯開きと地域活性化を融合させたイベントも主催されています。
コロナの影響で以前のようにできなくなった屋内での茶会にかわるものとして、
旅先や野外などで行う「茶箱」という習わしを活用しようと、窯の敷地にイベントスペースを整備予定です。
リモートでも参加できるワークショップも開催しようと意気込まれています。
肥前吉田焼/辻与製陶所
取り組み:新商品開発
嬉野の吉田地区にて、6代にわたって肥前吉田焼を製造する窯元、辻与製陶所さん。
得意とする「ダイヤ彫り」にてすでに商品化されているお茶ポットを、
吉田地区のそれぞれの窯元の特徴を活かした模様で製作できるようにと、先行事例として開発予定です。
「どこかがやらないと進まない」と吉田地区の今後を案ずる辻さんは、
頑固そうな見た目とは裏腹に産地全体のことを考える広い視野を持った熱い方です。
弓野人形/江口人形店
取り組み:窯の新設
来年で人形づくりをはじめて140年になる江口人形店さん。佐賀県内で唯一弓野人形を製作しています。
昔は、佐賀県内はどの家庭でも、お雛様は弓野人形のものが飾られていました。
今は、神社の福笹に使われる恵比寿様などを中心に製作されています。
助成金は、3代目であるお父様と一緒に50年以上前につくったという窯が古くなっているため、
窯の新設費用に活用予定です。新しい窯で、良い作品を生み出したいと意気込んでいらっしゃいました。
スタジオスポンジ
取り組み:シェアアトリエの設備管理
佐賀県内で作陶に励む、県外出身の菊本有花さん、田端修さん、中倉美咲さんを中心に、
使われていなかった工房を活用したシェアスタジオを設立されます。助成金は工房のメンテナンスに活用予定。
佐賀には焼物を学ぶ場はあっても個人活動をする場が少なく、せっかく学んでも県外へ出る人が多いとのこと。
なかなか自分で窯を持つのは難しいという方に使って欲しい、
今後は教室も行い人が集う場になれたら、と今後への思いを語ってくださいました。
各事業者さんで工房見学もさせていただきました。普段なかなか見ることがない登り窯などの工房の様子や、各事業者さんの説明に、審査員の方々もじっくりと耳を傾け、感嘆の声をもらしていました。
各事業者さんには今後の展望や事業の内容を熱く語っていただき、成果がとても楽しみです!
次回は秋にまた審査員の方々と視察を開催予定。
そこでまた進捗をお知らせいたします。
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