佐賀県は「板海苔の生産額」「ハウスみかんの出荷額」「このしろの生産額」など全国トップを誇る生産物も多く、そのほかにも全国的に人気のブランド米「さがびより」や、いちご「いちごさん」など有名な特産物がたくさんあります。さらに陶磁器文化でも、有田焼や唐津焼といった伝統的な産地を抱えています。知名度はやや低いかもしれませんが、佐賀は食・工芸・自然を一体で楽しめる、とても魅力的な地域なのです。ここでは、そんな佐賀県の工芸文化についてご紹介します。

九州北西部に位置する佐賀県は、有明海と脊振山地に囲まれた自然豊かな地域です。面積は約2,440㎢、人口は約80万人(2025年現在)。有明海では海苔養殖が盛んで、佐賀平野では米や麦の栽培が行われています。北部では果樹や畜産が営まれ、豊かな食文化を支えています。
また、佐賀県は古来より大陸文化の玄関口として栄え、陶磁器、ガラス、和紙、絨毯など多彩な工芸品を生み出してきました。特に県西部の松浦川流域は、陶石や粘土が豊富で、有田焼・唐津焼・武雄焼といった日本を代表する陶磁器産地を育んできました。

佐賀県の伝統工芸の源流は、16世紀末の豊臣秀吉による朝鮮出兵(文禄・慶長の役)に遡ります。このとき、多くの陶工が九州北部へ渡来し、佐賀にも新たな焼き物文化が伝えられました。李三平が日本で初めて磁器の焼成に成功し、有田焼の礎が築かれます。
江戸時代、佐賀藩鍋島家は陶磁器を藩の財政基盤とし、将軍家や朝廷に献上するため採算を度外視した精緻な磁器「鍋島焼」を制作。高台に刻まれた櫛歯文様(くしばもんよう)がその格式の高さを象徴しています。また、元禄期には古賀清右衛門が中国から緞通技術を導入し、「鍋島緞通」が誕生。藩主の御用品として保護され、美術的価値を高めました。
明治維新期には、佐賀の陶磁器が万国博覧会に出展され、外貨獲得の一翼を担います。鉄製大砲や蒸気機関を日本で初めて内製化するなど先進技術を積極的に取り込み、日本の近代化を支える重要な役割を果たしました。佐賀の伝統工芸は、単なる美術品ではなく、技術革新や国際感覚と結びついた文化的資産です。その歴史は地域の産業振興だけでなく、日本全体の近代化にも貢献してきました。

佐賀県では、陶磁器、織物、和紙、ガラスなど、多岐にわたる伝統工芸が根付いています。ここではどんな伝統工芸があるのか、ご紹介します。



佐賀県では、陶磁器を中心に国指定重要無形文化財に認定された技術と、その保持者(人間国宝)が伝統技法を守り続けています。

現在、佐賀県出身で工芸分野の日本芸術院会員は在籍していません。しかし、過去には陶磁器文化の盛んな地域性を反映するように、2名の物故会員が名を連ねています。
佐賀の伝統工芸は今、時代の大きな転換期を迎えています。ライフスタイルの変化により、工芸品が日常生活で使われる機会が減少。加えて、陶石や粘土、燃料といった原材料費の高騰も製造コストを圧迫し、価格転嫁が大きな課題となっています。
さらに、少子高齢化に伴う後継者不足や事業承継の問題も深刻です。こうした状況のなか、佐賀県は県窯業試験場を中心に人材育成と技術継承に力を注いでいます。
また、ピースクラフツSAGAでは助成金制度を通じて職人支援を継続し、伝統を未来につなげていくために窯の修復や新商品開発など、具体的な取り組みを進めています。伝統と革新の両立を目指し、地域一体となった活動が展開されています。
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