
人間国宝・井上萬二氏の訃報に接し、謹んでご冥福をお祈りするとともに、その生涯と功績に深く敬意を表します。
井上氏は生涯を通じて「白磁」の美に真摯に向き合い続けられました。その作品は単なる技巧を超え、静けさのなかに強い意志を宿し、見る者に深い余韻を残します。
ピースウィンズでも2021年に取材をさせていただき、ご自身の人生や技術について丁寧に語ってくださいました。また、当団体のふるさと納税返礼品として作品を取り扱わせていただくなど、多大なご協力を賜りました。
井上氏の言葉のなかで特に印象的だったのが、「まずは基礎を徹底的に学び、そこから新しい挑戦をしてほしい」という言葉です。伝統と革新の狭間で揺れる現代において、この真摯な姿勢は多くの若手工芸家にとって道標となっています。
私たちもまた、その志と精神を受け継ぎ、伝統工芸の魅力を次の世代へつなぐ努力を続けてまいります。
井上氏の数々のご功績を偲び、心よりご冥福をお祈り申し上げます。
ピースウインズ・ジャパン 佐賀事務所
1929年、佐賀県有田町に生まれる。15歳で海軍飛行予科練習生となり、終戦後に陶芸の道へ進む。
柿右衛門窯で7年間修行。名工・奥川忠右衛門に師事し、白磁の基礎を学ぶ。
1958年から佐賀県立有田窯業試験場に技官として勤務。技術研究に従事する一方、創作活動も本格化させる。1968年、日本伝統工芸展に初入選。アメリカをはじめ海外でも指導を行い、白磁の技術と精神の普及に尽力された。
1995年、重要無形文化財「白磁」保持者として人間国宝に認定。以後も紫綬褒章、旭日中綬章など数多くの栄誉を受ける。
【関連記事】
《つくり手》 有田焼の巨匠。卒寿を超えてなお輝き続ける「白磁の人間国宝」井上萬二さん
© Peace Winds Japan, All rights Reserved.