東馬窯の馬場宏彰さんは、ピースウィンズ・ジャパンが手掛ける商品開発プロジェクトEDITION2021にも参加した武雄焼の作家です。ふるさと納税返礼品としても大人気の定番商品をいくつもご提供いただいています。新しい事へのチャレンジやテストを重ねて研究していくことが大好きな馬場さん。そんな馬場さんのチャレンジ精神、探究心の原点となる学生時代の卒業制作についてお話を伺いました。
馬場さんは有田窯業大学校の研究科出身です。学生時代の卒業制作では、三角座標を用いた配合陶土試験にチャレンジ。それぞれの陶土の割合が100%のテストピースを三角形の各頂点に置き、陶土の配合割合を20%ずつ変えていくとどんな変化が起こるのかという実験をしました。また、同じ釉薬をかけた時に土によってどんな変化が生じるのか、還元炎焼成と酸化炎焼成での発色の違いも実験しています。これらの実験結果がひと目で分かる三角座標の製作は、馬場さんの作品づくりに対する思考回路のベースとなっています。当時の研究動機は「自分が好きな色合いの粘土をつくって、同じ釉薬を掛けたらどんな発色をするのか気になったから」と馬場さんは語ります。素材への飽くなき探究心は学生時代から着々と培われていたようです。
「学生時代に製作した三角座標は今でも素材に対する考え方の基礎になっています」と語る馬場宏彰さん。つくりたい理想のイメージに合わせて、土の粘り気や色味、耐火性などを陶土の配合でコントロールします。「目的に応じてテストを繰り返す」という研究的アプローチを日々行っているのです。釉薬や土の配合比もパソコンに記録され、独立後最初の1年は窯の温度が上がる時間や天気との関係などもつぶさにデータを取得していたと言います。「たくさん実験して、たくさん失敗してきた経験があるから今がある。学生時代から積み重ねてきた実験が身になっているなと最近しみじみと感じています。ものづくりも好きだけど、研究も好きですね」と学生時代を振り返って語る馬場さん。後輩たちにも「失敗しても、それを糧にして次を考えるのが大事だと常々伝えています。自分も失敗をしたからこそ、こうしたらうまくいくんじゃないかというアドバイスや説明ができるようになりました」と馬場さんは言います。失敗に立ち止まることなく、原因を考えて次につなげていく姿勢で馬場さんは作家人生をひたむきに歩んでいます。
(写真:藤本幸一郎)
公開日:2021年9月3日
更新日:2021年10月7日
馬場宏彰(ばば・ひろあき)
陶芸家
1973年佐賀県有田町生まれ。1991年佐賀県立有田工業高等学校窯業科卒。1993年佐賀県立有田窯業大学校企画デザイン科卒。1994年同大学校研究科修了。1996年同大学校助手を経て武雄市「飛龍窯」陶芸指導員として勤務。2005年武雄市山内町に「東馬窯」を開窯。
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